さて、この「声明」に基づき当園東園長あてに藤田自治会長名で提出した先の「胎児標本に関する質問書」だが、結局東園長は当時の小林茂信元園長にこれを送付。したがって、小林元園長より東園長への回答の形で返されてきたものが、そのまま私たち自治会に届けられたので、これを施設当局の第一次の回答として次に紹介しておく。
―前略―ご質問の件、お答え致します。胎児標本に関する質問書
一、カルテ調査結果について
記憶がない
二、胎児標本の処理について
@焼却は厚生省の指示によるものか A施設当局の判断か
指示なし、園長の判断。
B胎児標本は何体だったのか。
記憶なし。
C胎児の親に当たる入所者に何の連絡も行わなかったのはなぜか。
記憶なし。
―中略―資料もありませんし、記憶もうすれ、回答になりませんが、以上の通りであります。
三月一日 小林茂信
この小林元園長の「回答」をみるかぎり、「胎児標本」問題解決への道がいかに険しいものか、改めて思い知らされるだが、しかしまたこのように「記憶なし」で済むことでは決してない。私たち入園者自治会は、全療協臨時支部長会議の「声明」にある通り、「今後共、あらゆる機会をとらえ、その原因と責任の究明に努め」て止まない。もちろん胎児遺族の心情からすれば、知らされぬまま五十年余も愛しいわが子がホルマリン漬けにされていたわけで、あるいは闇の中で処分されていたのだから、一日も早く葬儀・供養したいだろう。その実現へは、これも同じく全療協「声明」の指摘―即ち「国および施設当局による直接の慰霊、謝罪の意の表明を必要不可欠とする」ものである。
そして折りしも、六月一三日〜一四日の両日にわたる「全療協・平成一九年度予算要求統一行動」実施最中の一四日、川崎厚生労働大臣との直接交渉の際、同大臣より「胎児問題についての謝罪」が行われた。行動に参加した藤田会長の報告もマスコミ報道の通りで、それは「患者、家族が多大な精神的苦痛を受けたことは誠に遺憾。心からお詫びをする」との言葉だったが、しかし先に紹介した国立病院課の「通知書」に示された「異常死の届出」や「検死の届出」はしない方針とか。これでは身元不明の胎児のDNA鑑定なし、また「新生児殺」も不問というわけで、厚労省の「謝罪」=「胎児問題隠蔽」でしかない。なお施設当局は、同月二一日、やがてハンセン病研究センターから戻される胎児の関係者並びに同じく胎児遺族の桜井哲夫氏に対し、東園長が直接出向いて謝罪した。私たち自治会は胎児関係者や遺族の意思を尊重しながら、このたび新たに発見された一体を含む一四五体の現存する標本胎児と、すでに闇にまぎれて処分された数百に及ぶだろう標本胎児や、さらにこれまで三000をこえる強制堕胎児すべての冥福をかちとるため、検証会議解散後その事業を国民運動として発展・継承し、胎児問題でも徹底的な真相究明をめざす「ハンセン病市民学会」(藤野豊事務局長)との連携をいっそう強め、この問題での国の違法行為の幕引きをゆるさず、あくまで納得のいく検証を求めて全力を尽くすものである。
(06・6・22)
posted by Moriyama Kazutaka at 01:01|
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